【スラ・スラン】
午後の行程が始まった。
バスを降りると、石の階段が見えた。階段の向こうには今まで見えていた植物たちはなく、そのまま空が始まっていた。イメージとしては、海岸の防波堤の、海が見える手前の雰囲気だ。 階段をのぼると、そこには予想通り広い水面が広がっていた。
スラ・スランは、王の沐浴場という意味である。700m×350mもの広い人造池が、王一人の沐浴のためだけに作られたという。水は雨水が溜まったものだそうだ。
このスラ・スランも歴史の洗礼を受けていた。ポル・ポト派がこの地を支配した時期に、スラ・スランはその床石をはがされ、田んぼにされてしまったという。
このスラ・スランは、東に水辺が広がっているので、日の出も美しいらしい。機会があればここからも日の出を見てみたいという気持ちになった。
スラ・スラン
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【タ・プローム】
いよいよ期待のタ・プロームにやってきた。ここは巨大な樹が遺跡を包み込み、破壊しているという。
この樹は、ガジュマルという樹だが、通常森などでは、他の樹木に種を落とし、その上で寄生樹的に成長し、すさまじい速度で根と枝を伸ばし、ついにはその寄生した樹を絞め殺してしまうらしく、「絞め殺しの樹」とも呼ばれる。
遺跡の外観からはそれほど目立たないが、遺跡に入ると、早速お堂を包み込み、レンガの間に割り込む根が目に入った。ビデオを見ると良く分かるが、遺跡を構成する直方体の石と石の間に根が入り込み、それを今まさに押し広げている真っ最中である。
過去に何度も、自然の力に驚くことはあったが、ここで目にしたのは、「本当に物理的な意味での力」を、自然が発揮している姿であった。しかも貴重な遺跡を、この遺跡の時間間隔から比較すると相当な速さで破壊をしつづけている。
遺跡を守るためには、このガジュマルの樹を除去する必要があるが、すでにこの状態だと、樹を除去した途端遺跡が崩れてしまうという。ということは、すでに遺跡は破壊されてしまっており、それをこの樹が立っている間はかろうじてその姿を維持できているだけだというわけだ。ガジュマルも成長が早いせいか、巨大になった後、すでに枯れ果てているものも多かった。そうなったら後はただ、枯れ木の崩壊とともに遺跡も崩れ行く。そして、「この状態になったからには、自然が遺跡を破壊している様をそのまま見せよう」と、修復をあきらめたのがこのタ・プロームであった。
いたるところに根を張り巡らす樹々に、ただただ、ため息が出るだけだった。比較的長い時間ここにいたが、それでも冷静にこの光景を見る心境に至らなかった。自然の力、遺跡の長い時間感覚、ガジュマルの成長のスピード、枯れゆくスピード、この遺跡を組み上げた人々の力、壊されゆく遺跡。速いような遅いような、力強いようなそれでいて脆いような、矛盾する感覚が詰め込まれた空間が、このタ・プロームであった。願わくば何時間もここにたたずんでいたかった。
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▲後から知ったことだが、このタ・プロームは「天空の城ラピュタ」のモデルになったらしい
【タ・ケウ】
タ・ケウは、行程には含まれていたが、一行はみんなすでに歩き疲れており、中に入らず外から眺めるだけにした。
タ・ケウ
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